正式名は大化切小野谷磨崖仏で、高さ約4mの凝灰岩の垂直な岸壁の中にある。高さ約2.6m、幅約1.16mの龕(がん)の中に不動明王立像が半肉彫りされている。胸に垂れた乳房が刻まれており、乳不動という別名がある。
乳の出を祈願する女性の参詣を集めていたこと、像が彫られている巨岩の脇にやや白色を帯びた湧水があり、産婦が飲むと乳が出ると言われていたという話が『緒方町史』にある。
江戸時代後期の作と考えられているとのことだが、もっと古いという記載もある。特徴として蓬髪と大きな足、それに胸の部分には乳房が彫刻されている。大分県には磨崖仏が多いが、乳房をもつものは他になく珍しいものと考えられている。
今山集落の裏谷に5箇所ほど点在している今山磨崖仏群のうちの1箇所で、今山八幡の鳥居の脇から昔棚田だったという谷に下って行った所にある。人家は点在するものの今山八幡までの道がかなりわかりにくく、人の気配のない場所で、訪問時には鹿を見かけた。
緒方町史編纂室:緒方町誌 総論編、緒方町、2001、p624〜625
大分県の名所・旧跡・史跡のブログhttps://oitameisho.hatenablog.com/entry/2022/06/11/014646
写真:奥 起久子撮影(2023/4/29)
情報提供:豊後大野市資料館