平山観音院の境内、本堂の側に「お乳水」と言われる滝水があり、周囲に「お乳観音」などいくつかの石像が立っている。飲むと昔から乳の出にご利益があると言われているという話が『北九州市史』にある。
湧水として広く知られ、現在も水を汲みにくる人が多いという。
ここには複数の悲劇の伝承がある。一つは平家の乳母が姫君と一緒に隠れ住んだが、源氏の追っ手に発見されて自害した場所という話。もう一つは江戸時代の小笠原藩の姫君が継母に疎まれて亡くなった、もしくは双子の姫君が生まれたため片方が捨てられて亡くなったという話で、『伊川史跡巡り』と一部は平山観音院公式サイトで紹介されている。
平山観音院は高野山真言宗の寺院で、本尊は十一面観世音菩薩。壇ノ浦合戦で敗れた平家の落武者が一族の菩提を弔うために建てた回向堂が始まりとある。
『北九州市史』によると1kmほどの場所にあった万隆寺(現存せず)の奥の院の修行場として滝の観音堂があった場所と言われている。
池に面して建てられている大きな建物が客殿で、本堂は小さめ。境内は大変広く、水量の多い滝があるほか多くの古い石仏がある。
北九州市史編さん委員会:北九州市史 民俗、北九州市、1989、p585
伊川校区町づくり協議会:伊川史跡巡り、伊川校区町づくり協議会、2022、p8〜9
平山観音院公式サイト http://www.hirayamakannon.com/concept.html
写真:内岡 恵撮影、河野 忠氏(天正大学)提供
資料提供:北九州市役所市民文化スポーツ局文化企画課