千手観音堂の裏にある岩壁からは、左右2か所から水が迸り出ている。「この水は霊水として古くから庶民信仰を広く集め、この水を汲んで飲むと乳がよく出ると言い伝えられています。そうしたことからご本尊である千手観音は、別名[乳の観音]といわれ、今も、毎日多くの人がこの霊水を汲みに来ます」という記事が、『築上郡史』『豊前市史』と豊前市公式サイトにある。
愛育会編『日本産育習俗資料集成』には、乳の祈願のため、蝋燭・線香を持参してお参りすると記載されている。
また湧き水にまつわる民話「挾間の乳の観音」が、『豊前市史』と市の公式サイトにある。働き者の夫婦が夢で仙人から教えられ、この水でお粥を炊いて食べたところ乳を授かったという話である。
両脇2ヶ所から水がしたたり落ちるのを見て、昔の人は乳を連想したのであろう。湧水は「千手観音堂 [乳の霊水]」という名称で市指定天然記念物になっている。
千手観音堂のご本尊は平安時代後期の千手観音立像で、国指定重要文化財。
築上郡史編纂委員会:築上郡史 下巻(復刻版)、臨川書店、1986、p531〜532
福岡県総務部広報課:郷土のものがたり その2(2刷)、福岡県総務部県政情報課、1989、p526〜527
豊前市史編纂委員会:豊前市史 下巻、豊前市、1991、p1165〜1166
豊前市公式サイト「千手観音堂の乳の霊水」https://www.city.buzen.lg.jp/kanko/miru/bunkazai/09.html
豊前市公式サイト「挾間の乳の観音の民話」http://www.city.buzen.lg.jp/kanko/miru/documents/004.pdf
環境省公式サイト「福岡県の代表的な湧き水のサイト」https://www.env.go.jp/water/yusui/result/sub4-2/PRE40-4-2.html
写真:内岡 恵撮影(2005/12/8)、河野 忠氏(天正大学)提供
資料提供:豊前市教育委員会