宗像市吉武の鞍手郡との境にある保場峠(乳母峠とも)の近く、釣川の源流に近い山道の傍らにある。戦国時代に宗像地区でお家騒動があり、宗像家の菊姫の乳母が逃げる途中で捕まって殺害されという。その場所に霊を弔うためたてられたという小さい石の地蔵で、願をかけると乳が出ると言い伝えられていて、いつも綺麗に手入れされているという記載が『宗像伝説風土記』にある。
この地蔵に乳の祈願の伝承があるという情報は、宗像市公式サイトの吉武地区ハイキングコースの地図の中や、地元作成冊子『新吉武物語』にも紹介されている。鞍手地区の方々が大切に守っているそうだ。
このお家騒動は山田事件と言われ、天文20年(1551)に起きた陶 晴賢の謀反が元になっている。この時領主の宗像氏男が戦死、後継ぎを巡って菊姫や母の山田の局などの関係者も亡くなった。菊姫や山田の局は近くの山田地蔵尊増福禅院という寺院に祀られて語り伝えられている。
上妻国雄:宗像伝説風土記 上、西日本新聞社、1978、p58〜59
吉武地区コミュニティ協議会:新吉武物語、2022、p40
ブログ「しんれい新聞」 https://tabi-and-everyday.com/archives/16854
宗像市公式サイトパンフレット「吉武地区コミュニティ」https://www.city.munakata.lg.jp/w022/020/010/070/vol3yoshitake.pdf
写真:坂梨千尋氏、吉武地区コミュニティ協議会提供