立屋敷の大イチョウ、日本武尊尊(やまとたけるのみこと)御手植公孫樹ともいう。遠賀川のほとりにある八劔神社の境内にあるイチョウで、樹高22m、目通り幹周9.7m、県指定天然記念物でチチも多い。
昭和30年(1955)頃までは母乳祈願の参拝者も多く、お礼参りに奉納された煎じかすを詰めた袋が多数ぶらさげられていたと水巻町教育委員会の現地案内板にある。そのほか「昔から祈願してこの樹皮を煎じて飲めば母乳が出ると伝えられ、乳の神様として近郷はもとより遠方からも多くの参拝があり、今も祈願者がある」と言う記載が境内の八劔神社由緒にある。
『遠賀郡誌』には「この樹の瘤の如く垂れたる皮を削り取りて煎じ服すれば乳汁出るとて肥豊近国よりも詣る者多く其滓をいれて還し納めたる袋幾千となく樹下に掛け聯ねたり」、『大日本老樹名木誌』『日本老樹名木天然記念樹』には「この樹の皮を授かると必ず乳が多く出るであろうと祭神の御託宜があり、醍醐天皇の御弟清氏の妃が悩んでいたところ、この神徳を聞いて延喜14年(914)に参拝してこの樹の皮を受けると、その夜から多く出るようになったと言われ、今でも参詣者が多い」との記載がある。
八劔神社の祭神は日本武尊と砧姫命(きぬたひめのみこと)で、東征の帰途日本武尊が亡くなったという知らせが届いた時に仮宮跡に建てられたのが起源という非常に古い神社。日本武尊は熊襲征伐で九州を訪れたとき砧姫命に出会い、このイチョウは砧姫命との別れ際に証しとして植えたという伝承がある。
本多静六:大日本老樹名木誌、大日本山林会、1913、p119
遠賀郡誌復刊刊行会:遠賀郡誌上巻 増補改定版、1961、p736
帝国森林会:日本老樹名木天然記念樹、大日本山林会、1962、p298
福岡県総務部広報課:郷土のものがたり その2(2刷)、福岡県総務部県政情報課、1989、p544〜545
NHKアーカイブスhttps://www2.nhk.or.jp/archives/michi/cgi/detail.cgi?dasID=D0004400354_00000
ブログ「そら」 https://sora07.exblog.jp/20160660/
写真:奥 起久子撮影(2022/7/26)