日本助産師会出版

乳信仰探訪

本城の乳仏さま

享保19年(1734)の銘があるお地蔵さま
堂内は綺麗に管理維持されている

北小学校にほど近い城から祗園岳中腹の須賀神社へと向かう途中の山の中に小さいお社があり、地元の人々から乳仏(ちぼとけ)さまの愛称で呼ばれる地蔵菩薩が祀られている。享保19年(1734)の銘があり、参拝すると母乳がでるようになるという伝承がある。
宮若市の担当者の方から所有者に聞き取り調査をしていただいたところ、4〜50年くらい前までは多くの若い女性が乳の祈願に訪れていたこと、祈願に際しては布で作ったてるてる坊主のような乳型がたくさん供えられ、片付けるのが大変なほどだったという(2022年聞き取り)。
乳の祈願について記載された元資料はないようだが、地蔵堂と言われており、宮田役場にある資料『社寺明細帳』に、地蔵堂(乳仏地蔵)の堂宇、横1間、入1間2尺、明治9年再建とあるとのこと。以前は人が中に座れるほどの広さのお堂だったそうだ。
武藤不二夫編『宮田の史跡と文化財』には「本城にあり、本尊地蔵寺で天正年間(1573~1592)に安置したもので霊験多い」と紹介されているとのことで、古くからのもののようである。現在は四国札所巡拝の大詣(まい)り(千人詣り)として春秋に2回行われる六ヶ岳、宮田の2つの札所となっている。
お地蔵さまに彫られている享保19年は大飢饉があった時期で、享保17年(1732)から翌18年の間の福岡藩の餓死者はおよそ10万人という記録があるそうだ。この餓死者は藩人口の3分の1にあたるといわれており、乳仏さまが置かれたことはこのような状況と関連があったのかもしれないとのことである。

地図 https://drive.google.com/file/d/1tWOy58HDNqgBif6y6ELo9GTOt6hJhc9h/view?usp=share_link
情報と写真:宮若市提供

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