県立矢部高校の敷地の中に、高さ70cmほどの古い石の祠があり、中に十二単衣をまとった木造の女性の坐像が収められている。
「お梅さん」と呼ばれ、祈願すると乳の出る効能があると言われて参詣人が絶えないという記載が『矢部町史』にある。『肥後国史』には、この女性は「御梅殿」と言われ、昔この地を治めていた豪族阿蘇氏の息女とも侍女とも言われその墓地であること、ご利益を得るために米団子をお供えして祈願するとの記載がある。
以前は近くに弾正スギと言われる巨木があって阿蘇弾正のお墓の場所と伝わっていたという。真偽の程は不明とのことだが、この弾正さんとお梅さんが不義のため死罪になり別々の場所に葬られたという伝承があるそうだ。
矢部高校の敷地は15世紀末から16世紀頃に建てられた阿蘇氏の浜の館跡と言われる。安土桃山時代、島津勢に攻められて落ち延びる際に宝物を埋めたという伝承があったというが、これが近年発掘調査で確認され、発掘された宝物は国の重要文化財に指定されている。
矢部町史編さん委員会:矢部町史、1983、p201〜202
後藤是山:肥後国史、九州日日新聞社、1917、p142
山都町公式サイト「山都町郷土史伝承会」http://www.town.kumamoto-yamato.lg.jp/ijyuuhp/a0022/Oshirase/Pub/Shosai.aspx?AUNo=286&OsNo=39
写真:田上 彰氏(山都町郷土史伝承会)提供
情報提供:山都町郷土史伝承会、山都町教育委員会