福本聖母(しょうも)八幡宮境内にあるクスノキは、樹高20m、目通り幹周6.0m、樹齢伝承700年と言われ、市指定天然記念物。古くからご神木として崇められてきた。
環境庁1991年日本の巨樹 ・巨木林 全国調査データベースに「福本聖母八幡宮の大楠に、乳もらい、夜泣きの祈願あり」と、資料『泗水町の文化財』には「乳もらいや夜泣等の祈願が多い」との記載がある。
ご祭神は神功皇后、仲哀天皇(夫)、応神天皇(子)の3柱で、昔から聖母信仰が篤く、子どもに関連する信仰はそこから派生したものと資料にある。
クスノキの樹勢は大変旺盛で、境内から神社の屋根の多くを覆わんばかりに枝を伸ばしており、根が乳房状のコブになっている。
現在現地案内板に記載されているのは夜泣きに関する情報のみである。すなわち、この木に発生する陸生巻貝のキセル貝を子どもの枕の下に入れ、生きたまま返すと夜泣きにご利益があるという、樹木に発生する陸生巻貝に因んだ伝承*である。
福本聖母八幡宮は嘉元2年(1304)に日置丹後守藤原恒治が玉名郡千田庄の聖母八幡宮を勧請した時に始まるという古社。
*陸生巻貝に因んだ伝承:乳の祈願の場所で、樹木に発生する陸生巻貝に因んだ話は他に2件見つかっている。東京の大国魂(おおくにたま)神社のイチョウの蜷貝(にながい)は、煎じて飲むと母乳の出をよくする、鹿児島県投谷八幡(なげたにはちまん)神社のイチョウの巻貝は、よだれを止めるという。
泗水町教育委員会:泗水町の文化財、1988、p15
泗水町史編纂委員会:泗水町史 下巻、2001、p237〜238
写真:奥 起久子撮影(2021/5/5)
資料提供:菊池市教育委員会