宇土市から宇城市に至る県道14号線を松橋(まつばせ)街道といい、市の境付近は坂になっていて嫁坂と呼ばれる。このあたりの道路から少し入った畑の中に、地元でお諏訪さんという名前で親しまれている諏訪神社がある。
ここに甘酒や飴を奉納して祈願すれば乳が出ると言われていたこと、飴が買えなかった女性の悲願が霊となって付近をさまよい、9のつく日の雨の夜に出てきて通行人に飴を売っている場所を尋ねるという怪談話が伝わると、宇土市教育委員会の現地案内板にある。
『肥後国史』には「乳汁の乏しきもの祈りて賽に銭あるいは禮(れい:甘酒のこと)を持ってす」という記載があり、この話が『不知火町史』に記載されている。
やや分かりにくい場所だが、国道からの入り口に小さい案内板が立っている。車が2、3台停められる程度のスペースがあり、周囲は綺麗に清掃されていて、小さなお堂とその脇に石の祠と石碑が並んでいる。
石の祠は弘化3年(1846)、石碑は天保11年(1840)に寄進されたという銘文が残っており、古くからの地元との結びつきを物語る。
不知火町史編纂委員会:不知火町史、1972、p452
写真:奥 起久子撮影(2022/05/03)
資料提供:宇土市教育委員会